音楽業界の今、そして未来

音楽業界の今、そして未来
10月30日に、英国大使館主催「これからの音楽」というカンファレンスが開催されます。Wiredのサイトにて、カンファレンス参加の応募があり、是非とも参加してみたかったのですが、平日開催ということで、関東に住んでいない人間には応募しずらいものがありました。とはいえ、数年ですが音楽業界に従事していた人間として、現在の音楽ビジネスに対して思う事があり、つらつらとまとめてみました。

現在の音楽業界について

今更言うまでもない事ですが、今やCDやDVDといったフィジカル・メディアが売れなくなり、デジタル・メディアの売上も、フィジカルの減少をカバーできるまで大きくはありません。音楽業界の売上は、下降を続けています。

そこで、各アーティストの事務所はどうしているかというと、ライブを中心にした収益構造を実行しています。つまり、メディアでの収益ではなく、ライブパフォーマンスとグッズの収益です。
そもそも、安くはない金額を払ってライブに来るくらいですから、元々、そのアーティストを好きなはずです。ということは、ライブグッズを買ってくれる人も大勢います。勿論、会場に来た人、全員が購入する訳ではないのですが、買う人は全種類のグッズを購入するため、平均すると来場者一人につき、チケットと同額くらいのグッズ売上は生まれます。

ただ、このやり方は、もって数年だと思います。というのも、ファンの数を増やしているというより、『取れるところから多く取る』という姿勢が見えてしまうからです。
今ライブに来てくれているファンも、いずれは新しい生活を始め、ライブから足が遠のいたりグッズに充てられるお金が少なくなってはずです。そのような事態になった際にどうするか。言わずもがな、メディアの売上減少と同じ下降の流れになってしまうと思います。

何故、問題を解決出来ないのか

全くの主観ですが、少しだけ中の人だった期間もあるので、それ程ずれてはいないと思います。

まず、これまでの音楽業界は、アーティスト・パワーでお金を稼いでいました。CDも売れていたし、テレビもそういったアーティストをこぞって取り上げて、それが露出の拡大につながり更にCDが売れるという、非常に良い流れを作る事が出来ていました。
ところが、メディアの売上減少と共に、アーティスト・パワーも減少して、循環が上手く流れなくなった。

そのような場合、それまでとは違った方法を色々と試してみるのが普通だと思うのですが、音楽業界においては、そのような動きが鈍かったように思えます。

それは何故か。

多くの人が勘違いしている事ですが、日本で最も音楽関連の売上が多かったのは1998年です。実は、世間一般のバブルとは、全く被りません。そして、年数から逆算してみると、その一番良い時期に入社した人が大体30代半ばから40代前半。いわば、会社の中心となるべき人たちです。
そういった人たちに、『過去の栄光を忘れて、新しい事に挑戦しろ』といっても、中々難しいのではないでしょうか。逆に、古いやり方で、以前の売上を取り戻そうとして、ジリ貧になっているように見えてしまいます。

音楽業界の今後は

それでは、今後の音楽業界はどうしたら良いのか。
まずは、今の取れる所から取るというのではなく、音楽を聴く人の裾野を広げて欲しいと思います。国内だけでなく、海外。それも、フランスや東南アジアというような、既にある程度のリスナーが育っている地域ではなく、全く新しい地域にファンを増やして欲しい。

また、音楽と実生活を繋ぐ、新しいストーリーを生み出して欲しいと思います。
今、30代の人間だったら、発売前の曲を録音するため、テレビのスピーカーにマイクを近づけて録音した事のある人間は、非常に多いと思います。そして、録音している時に限って親の声が入って失敗したり、テープがきちんと回らなかったり。
他には、好きな子に送るため時間をかけてミックステープを作り、勇気を出して送ったはいいんだけれど、その女の子が他の男と歩いているのを見かけて、オススメ曲がこれ以上ない悲しい曲のセットリストになったり(※実体験です)。

また、友人からオススメのアーティストを教えてもらったり、テレビで気に入った曲が流れたら、アーティスト名を覚えて、CD屋やセコハンでCDを探し回ったり。

こんな体験をすると、その当時の曲やアーティスト、そして、それらに対する思いを一生忘れることはありません。

++++

これまでのメディアを中心にした音楽ビジネスは、CDを買ったり借りたりして、コンポやウォークマンで音楽を聞く人間をターゲットにしていました。つまり、良い物を出せば、それを受容してもらえ、それが音楽業界の利益へと繋がりました。

所が、今はほとんどの人がスマホを持っている時代です。言い換えるなら、高性能のMP3プレイヤーと無料で音楽を入手する方法を持っています。そんな中では、良い物を出しても、すぐにコピーが生まれ広がっていきます。

そのような時代に、どうやって音楽業界が生き残っていくのか。非常に難しい問題です。もしかしたら、19世紀以前のように、パトロンからの援助が無ければミュージシャンは生きていけなくなるかもしれません。

ただ、一人の音楽ファンとして、そのような事態になってしまうのは非常に寂しい。ですから、一日の間で10分でも、音楽を聞く人が増えていって欲しいと思います。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする