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妹尾隆一郎さん、死去のニュースに寄せて

妹尾隆一郎さんが亡くなられました。
オフィシャルサイトでの記事によると、病気療養中だったようですが、12月17日に68歳で旅立たれたそうです。

世間では、あまり知られていないアーティストかもしれませんが、日本一のブルースハープ奏者だと思います。なのですが、Barksのような音楽専門サイトでも記事になっておらず、ナタリーで訃報記事を見かけた程度です。

日本のブルースハーモニカの第一人者、妹尾隆一郎が死去

日本のブルースハーモニカの第一人者である妹尾隆一郎が12月17日22:11に死去した。68歳だった。

妹尾は12月4日に腸閉塞であることがわかったため入院。長期療養が必要なため、2018年以降のライブ活動を一切停止し、治療に専念する予定だったという。彼のオフィシャルサイトでは妻である妹尾菊江氏が書いた、妹尾が旅立ったときの病院での様子が掲載されている。

ハーモニカというと、いわゆるフォーク的な演奏をイメージする方が多いと思いますが、妹尾さんの演奏はブルース、というよりカントリーブルースをルーツとしており、まさにハーピストという演奏でした。

また、演奏を聴くとわかるのですが、一音一音のキレが良く、個々の音をクリアに聴かせてくれます。下手な演奏だと、隣の音と混じってだらけて聞こえるのですが、妹尾さんの演奏は、おそらく口の筋肉の使い方が素晴らしいのだと思いますが、シャープかつブルージーな音でした。

また、ルーツはカントリーブルースだと思うのですが、最近の音源でも聴くことができます。そんな中で、おそらく世界で一番聴かれているのは、カウボーイビバップのサントラではないでしょうか。この演奏は、妹尾さんのアドリブから始まり、スライドギターとの絶妙な絡みを聴かせてくれます。

生前、生演奏を観ることは出来なかったのですが、30年近く前、妹尾さんが監修されたブルースハープの通信講座を受講しており、それが妹尾さんとの出会い(実際には会っていませんが。。。)でした。
その講座は、教則テープと教則テキストが送られ、課題曲を自分で吹き込み、それを返送し妹尾さんに講評をしてもらえるというものでした。ですが、実は、僕は録音して返送することが無かったので、生徒としては不真面目ですね。。。

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当時、ブルースハープを練習していたので、妹尾さんの教材以外にも何冊か買ってみたのですが、少なくとも自分が購入した教材の中では、妹尾さんのものがベストでした。

通信講座を申し込むと、デモ演奏が吹き込まれたテープが10本くらいと4冊の教則本が送られてきました。教則本は思いの外薄く、そのうち1冊はブルースハープの構造や歴史、あとは楽典の知識が中心で、すこしがっかりしたのを思い出します。

そして、2冊目は丸ごとリズムの練習に充てられており、『早く曲を吹きたい』と思ったのを覚えています。ですが、今思えば、ブルースで一番重要なリズムをまず練習してもらいたいという意図があったのだと感じます。

普通の教則本だと、ドレミを吹いたら簡単な曲を演奏させる内容のものが多いのですが、妹尾さんの教材では、ブルースで頻繁に使う1、2穴を中心としたリズム課題を、まずは練習させます。また、リズムのパターンもブルース進行、シンコペーション、スウィングなど、ブルースやロックで使われる実践的なものが中心でした。

そして、その次にようやくベンディングに入ります。もちろん、息の流れを変えるといった抽象的な言葉ではなく、口の筋肉の使い方から、個々の穴それぞれについて、詳しく紹介されていました。そういった基本を習得してから、実際の曲を練習する流れになっています。

いわゆるフォーク系のハーモニカ奏法は、ベンドさえ出来ればそれほどテクニックは要らないのですが、ブルースだとベンディングやトレモロなどが非常に重要になります。
それらを一からしっかりと練習させる素晴らしい教則本でした。

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ブルースハープへの入り口を、妹尾さんが開いてくれたのですが、なぜ一度も観ることががなかったのか、今になって悔やまれます。

心より、ご冥福をお祈り申し上げます。

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音楽関連のディストリビューション、Webディレクターとして働いてきました。最近は、もっとコーディングしたいなあと思っております。